夏目漱石「こころ」を30年ぶりに
読み返して
あの先生、あんな人だったっけ?!
の一言ですよ。もっと素敵でなかった?!
若い時と今とでは読後感が随分と違うものですね。
そもそも先生!!
主人公の「私」の父親が死にかけている時にあんな手紙を送るなんて。幾ら鉛のような思いを引きずっているにせよ、自己本位もいいとこではないでしょうか。
時代が時代だとはいえ、天皇崩御にあわせて殉死って…。殉死でもないし…。
最近読んだ、藤原正彦著「国家と教養」の中にも「鷗外も漱石も、自らの精神の中枢にあった明治の精神を、乃木将軍の自決により覚醒され、殉職に共感したのでしょう。」という一文がありましたが…。だからって…。
親友のKをあの自分の下宿宅に連れて、住まわせるんだってそうですよ。下宿のお母さんが反対したのに、Kを憐れんで、その時の一時の感情でしょう?それとも故意ですか?
下宿宅の綺麗なお嬢さんを見たら、誰だってどんな気になるかも予想もしないで、天然ウマシカ、としか思えないわ。これが当時の教育、結婚適齢期の恋愛をしたことのない時代背景の男子なのでしょうか…。
と怒ってみましたが、誰にでも自尊心や好きな女性をとられたくない感情や、自分にだけ振り向いてくれている優越感なり、今の時代だって心は変わらないのだから、分からなくない気もしますが、どうして先生はもっと潔くないのかしら~。Kの方が潔くて、わたしがあの御宅のお嬢さんだったら先生よりKと結婚しちゃうかも。
妻になったお嬢さんに、純白のまま心に一点の黒点も残したくなく、なんて随分と自己本位で、あんな態度をずっととられているお嬢さん(妻)の気持ちは無いかのよう。挙げ句の果てに自殺されちゃ、妻としてはかなわないなぁ💧
親友だけでなく、女性の人生めちゃくちゃですよ。ご自分の人生も。
優柔という言葉が時々出てきますが、わたしから見たら先生は、めちゃ優柔不断ですよ。
妻になる人のことも、男から見た観点しか書けないからああなっちゃうんだと思いますが、お母さんとお嬢さんは相当に二人の下宿人の事を話していたと思いますよ。だから結婚の依頼もすぐに承諾しましたしね。いろいろ感じていたと思うし、知っているけど知らないふりをしていたかも。
もっとこころを割ってどんなことでも話し合う必要がありますよ。先生、下宿のお母さんにも注意されていましたよね。
恥や恐れや相手がどう思うかばかり考えていると、なかなか前には進めないものですね。
あ~ぁ、なんだか読んでいて辛くなっちゃいました。武者小路実篤の「友情」と話がごちゃ混ぜになっていましたが、「こころ」はこういう話だったかぁ~若い頃は、この先生、意外と好きな感じでしたが、よくよく読んでみると、わたしの好きな潔さ!というものが欠けていて、時々ふと笑うし、今で言う、引きこもり、ひきずるタイプで、身勝手に自殺…たまらないですなぁ。
謙虚さと見栄と自尊心が入り混じって、はっきり胸の内を語ろうとしない、あの頭でっかちのアマチュア感がたまらないですよ~!
人間、勇気をもって心の奥底を話すべき人に話すと、急にスッキリして、天を仰ぎたくなるほど晴れやかになるのに、そのスッキリ感を知らないで逝った先生、哀れです>_<
再読して、学生時代に読んだ印象とは随分違いましたが、この年齢で読むと、善と悪のキラキラ&ドロドロとした表裏一体の自分のこころが、怒りのせいなのかすっかり洗われて、さてイチから出直そうかという気持ちになるから凄いですね。学生時代にもっともっと読み込むべき一冊でした。
先生の遺書の最後の方に「私の過去を善悪と共に他の参考に供するつもりです。」と書いてあったけど、きゃー、100年経っても、いまだに参考になってるじゃない!
反面教師的な内容を読むと、人って、自分のこころと照らし合わせて、これじゃダメだ、と反省してみたり、怒ってみたりしているうちに、すっかり正されて、スッキリしちゃっているのですよ。
「こころ」本当に凄い小説ですね~!
文豪、夏目漱石は、やはり偉大でした!