癒されるモノ・トコロ・ヒト

逗子に暮らす作家がおすすめするアラフィフ生活

実家を大掃除 後編

 

実家に到着すると、いつもの賑やかな家族の声がない。

庭に出るとトマトがなっている。トマトだけが、いらっしゃいと語りかけてくれる。大掃除のご褒美かのように毎日ひとつ収穫しては、ひと口で食べる。甘い。

 

f:id:chopin2260:20200904163742j:image


大掃除を始めて気づいたことは、この家には世間でいうところの宝物、貴重品が一切ない。あるものは、ただただ大量の写真と手紙と年賀状である。年賀状が毎年400枚くらい来る。母がそろそろやめたいといっても父が聞かない。年賀状を宝物のように保管している。嫌になるほどの量である。旅行写真や親戚との写真、昔のモノクロアルバムがどの部屋にも無造作に置いてある。懐かしく引っ張りだしては眺めてそれきりのようだ。写真や手紙、新聞広告、ハンカチ、ティッシュ、レシートや病院の検査表などが入り混じった紙袋がどの部屋にも20くらいずつある。これはどういうわけか。

 

考えてみると、うちの母は昔から客が来るとなると、リビングやダイニングのテーブルの上のゴチャゴチャをデパートの紙袋にサッと入れて違う部屋に持っていき、客をもてなした後は、その紙袋の存在を忘れるのである。要は大したものが入っていないので、何年でもそのままなのだ。片付けたい、掃除したい、という意思だけはあるようで、洗剤だけが大量に買い込まれているのには驚いた。

 

f:id:chopin2260:20200904164450j:image


父が誰かれ構わず客を連れてくる人で、例えば夜中、仕事の帰りにタクシーの運転手まで連れてくる。だから家族は瞬く間に片付けを迫られる。

 


袋の中を覗き、ハンカチは洗濯機に、それ以外は分別し、写真は専用ダンボール箱へ、手紙ハガキ類はケースを買ってきて地道な作業が夜まで続く。

 


客部屋は花柄の壁紙にピンクのフリフリカーテンがしてあり、ダブルベッドが置いてあるのだが、いつの間にやら物置と化していた。

 


ベッドの上には使わなくなった背中矯正チェアやら、押し入れに入りきらない毛布や布団が重ね置きされている。グチャグチャだ。これではいくつ部屋があっても意味がない。

 

f:id:chopin2260:20200904164041j:image


この部屋に洗面所の古い棚を入れた。中に写真や手紙を入れる予定だったが、入りきらない量なので、両親が帰ってきてから、写真や手紙の入った幾つもの段ボールの中を一枚一枚整理しよう。

 


父がゴルフをしている写真まで出てきた。こんなに綺麗なフォームなのね…初めて見る父のゴルフ姿。

 


全ての部屋にバルサンを焚いた。ダニがいそうなのだ。ベッドカバーからシーツから毛布全てを洗濯した。カーテンも丸ごと洗う。カーテンは引っ掛ける部分をクルクル巻いて輪ゴムでしっかり止めてから洗濯機に入れると、金具が外れることもなくうまく洗える。脱水して、すぐに掛け直せば、真夏だから瞬く間に乾く。

 

カーテンを洗っている間に窓枠や網戸、窓を掃除する。雑巾が真っ黒になる。ゴム部分のカビにはカビキラーを吹きかける。歯ブラシや綿棒を使って、窓のサンに黒い点ひとつ残らないよう掃除する。真っ黒から真っ白になった時の達成感と幸福感は格別だ。部屋に入ってくる風まで爽やかな良い匂いがしてくる。久しぶりに窓の外の景色を眺めた。緑が美しい。

 

f:id:chopin2260:20200904164723j:image

 


それにしても物が多い。娘の私からしたら殆どがゴミなのだが、捨てられないところをみると後生大事にとっておきたい思い出の品々なのであろう。納戸はどうなっているのか。二畳くらいの納戸を開けると、これまたお店やデパートの袋で溢れかえっている。全て出して紙の日に捨てた。納戸がスッキリしまだまだ入りそうだ。コストコで買ってくる大量のキッチンタオルやティッシュペーパー、ガムテープ類など住所を決めて整理整頓する。

 


あっちもこっちも引っ張り出したので、歩行困難で、あらゆるものにぶつかり、脚は青あざだらけになっていく。

 

f:id:chopin2260:20200904164221j:image


静まりかえった実家で、ひたすら片付けに専念する日々。コロナで不要不急の外出も避けたいので、私にとっては丁度良い遊び場なのだ。

 


ゴミが45リットルの袋に計30袋は出た。粗大ゴミも幾つか捨てた。本当はもっと捨てたいところだが、あまり捨てると親がボケると聞くので、気づかない程度に現状維持しなくてはならない。

 

柔らかいフローリングも、以前飼っていた猫のオシッコの跡で色が抜けている。

 

f:id:chopin2260:20200904164909j:image

 

その上からワックスを塗ってしまっているので、ワックス剥がしを塗り、溶かして削って、色付けし、更にワックスを塗るという細かい作業もある。

 

f:id:chopin2260:20200904164953j:image

 

リビングのソファに敷く大きな四枚はぎのムートンが客部屋の隅に放置されていた。ムートンは所詮、動物の毛皮だ。クリーニングに出すと高くつく。バスタブの中にシャンプーを入れてギュッギュと足踏み洗いをする。目を瞑るとぶどう酒でも作っているような気分だ。

 

f:id:chopin2260:20200904170307j:image

 

ぬるま湯を何度も取り替えては洗濯する。最初は濁った水が段々と澄んでくる。

 

f:id:chopin2260:20200904170342j:image


f:id:chopin2260:20200904170339j:image

 

最後にコンディショナーを混ぜて足踏み10回。ムートンも髪の毛と同じく滑らかになる。

 

f:id:chopin2260:20200904170415j:image

 

ムートンをバスタブの端に掛けて水切りする。バスルームの乾燥機をオンにして二日たったら、殆ど乾いていたので、庭に運んで陰干しにした。その後、ブラシで毛を解くと、新品のように綺麗になった。やったね!

f:id:chopin2260:20200913165057j:image


この家の壁紙はペンキが塗れるものなので、変色しているところへ刷毛で真っ白のペンキを塗ると真新しくなるから楽しい。しまいには玄関外の門の周りまで塗り上げた。雨の跡が黒く流れて汚いのが真っ白になった。玄関が美しいのは良いことだ。

 

f:id:chopin2260:20200904165049j:image
f:id:chopin2260:20200904165052j:image

 


数年前に母と一緒に行ったヴェトナム。そこでシルクの生地を買ってきた。リビングとダイニングの窓枠に、飾りカーテンにするためだ。私が自宅の窓枠に巻いたカーテンの形と、母が巻いたカーテンの形が違う。

 

母はキッチリ巻きすぎて、自分の巻き方が嫌だ嫌だといつも言っていた。直す気力もなかったが、今回すべて外して埃をとって巻き直した。母があまりにキッチリ巻いていたので、シワができてうまくいかなかったが、こんなゆるい巻き方がお好みらしい。

 

f:id:chopin2260:20200904165213j:image


客部屋にはまだ写真と手紙の段ボールが積み重なっているが、とりあえず綺麗になった。これで両親の親友たちを呼んで宿泊させられる。泥棒がはいっても盗むむのは何もないが、大量の手紙と思い出写真という宝物に囲まれて、両親は幸せに暮らしてきたのだ。父の稼いだお給料は衣類と旅行と美食に消えた。両親にとって宝物とは沢山の友人達なのだ。それを垣間見た時に、いろいろな人生があるものだなぁと感心したり、反面教師にしたり、リビングの床を直しながら、東京のど真ん中にいる両親を想った。

 

          おわり

 

 

f:id:chopin2260:20200904164723j:image

 

 

 

皮膚再生一押し美容液

f:id:chopin2260:20211007162031j:image