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逗子に暮らす作家がおすすめするアラフィフ生活

「府中三億円事件」の二人の登場人物 白田と三神

 

府中  三億円事件の犯人告白本を読んで、感想文を書きたくなりました。

 

ネットでは、2018年12月10日出版の「府中三億円事件を計画・実行したのは私です。」の小説は、フィクションだ、という声の方が多いですね。

 

白田という著者の名前も、最初からまるでわたしは「シロだ」と言っているかのようです。ふざけるのもいい加減にしなさい!と言いたいところですが…。


個人的にはフィクションかノンフィクションかはどうでも良いのです。

ただ正直なところノンフィクションだと思いたい。その理由は下記に。

 

 

以下、ネタバレになりますので、この書籍を読むご予定の方はここまででね(^ ^)

 

ポプラ社 書籍 「府中三億円事件を計画・実行したのは私です。」



 


もし、この小説が、本当に犯人白田の告白本だとしたら。仮定。

印税目当てではないはずですから、単行本で1000円は確かに安いですね。

 

当時、学生紛争が盛んな時期に、皆と同じ様にのめり込めないノンポリだった白田の生活を垣間見ると、気持ちはさぞ低迷していたことでしょう。

 

そして何より、密かに恋心を抱いていた京子を、親友のカッコいい省吾にとられてしまう。

 

京子を紹介した間抜けな自分を、どれほど責め、悔しい思いをしたことでしょう。内心、省吾との友情にも多少ヒビが入っていたかも、ですね。

 

これは、名作、夏目漱石の「こころ」や武者小路実篤の「友情」をも彷彿とさせるシチュエーションです。

 

白田が、学生達や警察や機動隊もそして省吾の鼻も明かしてやりたい、そう思っても不思議ではありません。

 

ただ普通の人は実行には移しません。しかし、白田は違った。

 

 

彼はアパート住まいなのに、何故か車を持っている。当時車を持っている学生と言えば、お金持ちの馬鹿ボンだったかもしれません。

 

白田は京子を何としても振り向かせたかった。しかし省吾ほどの魅力は自分にはない。諦めの気持ちが先行し、美しい三神さんに暫く気持ちを移そうとしてみる、が、矢張り京子は白田にとって最も理想の女性だった。京子は女優の吉永小百合さん似だという。

 

一方、才色兼備の三神さんは、三神親衛隊が多い中で、白田だけが、自分に面と向かって正当な意見をしてくる果敢な優秀な男性とうつる。気になる。そして好きになっていく。

 

あの告白本の最後の、三神さんが白田に送った恋文には迫力があります。白田のような身勝手な男を一途に好きになってしまった彼女の切なさが、胸に迫ります。この三神さんの気持ちは、生涯一人の人しか愛せなかった人にしか解らないでしょう。

 

 

おそらく妻である京子の葬儀の夜に、息子に告白する父。

 

息子にとっては両親が犯罪者なのだから、贖罪しないといけない、とまるで省吾を彷彿とさせる真剣さで父に迫りくる。

 

白田にはそれほどの罪の意識はない。しかし息子に説得されて、告白を決意する。妻が亡くなって、もはや自分しか語る者はいない。語らなければ全ては闇に。

 

密かに本の間か何かに隠してあった三神さんの手紙もある。告白することが、贖罪になる、三神さんにも事情を伝えたい。今更身勝手だが…。

 

 

白田は終始、身勝手、自分勝手な利己主義な男です。

 

それでも、省吾に好かれ、三神に愛され、京子からも信頼される。

 

小説の中のこの事実は、彼が相当に外見が良いのと、気の利いた反応は即座には出来ないけれど、思考力があり、落ち着きのある、しかも不器用ではあるが、大胆不敵な男性だったのが魅力だったのでしょうか。

 

才女の三神さんがここまで好きになる人って…実は私まで惹かれます。

 

と思いながら、ふと三億円事件について今から17年前に出版された小説が存在することを思い出しました。

 

確か、女性が犯人だった、とのセンセーショナルな内容で、世間で話題になりましたね。女性などあり得ない、と当時は興味もなかったのですが。

 

しかし、改めてその小説のタイトルを知りたくなり、Amazonで検索すると、タイトルはなんと「初恋」ではないですか。早速取り寄せて、読み耽る冬の夜。作者は中原みすず

 

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前書きの一行が気になりました。

 

「わたしは3億円事件の実行犯だと思う」

 

だと思う。

 

予想通り、もしや作者は三神さんでは?

 

この「初恋」も白田同様に、作者の中原みすず、のみすずがそのまま小説のヒロインの名前なのです。そして中原みすず著は後にも先にもこの一冊のみ。経歴不詳。

 

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白田の小説では、三神さんは実際に事件に関与していないにしろ、事件を実行したそもそもの原因を考えると、三神さん無しには語れない。そういう意味では、この出だしは、才女の、謙虚で健気な一行とも言える気がして、深い溜息が漏れます。

 

 

また「初恋」には白田と省吾と京子に似たような、いえ、同じDNAを匂わせる人物達が同じように喫茶店の奥の席で登場するのです。白田役は、想像していた通りの、政治家の息子で、母親はその妾、という関係。しかも白田は東大生。三神さんは複雑な生い立ち。

 

極め付けは、身勝手な白田役に作者のみすずはこんな歌をうたう。

 

「のどぼとけ 切って恋の血 見せようか ひとりがっての 君の背中に」

 

あぁぁぁ〜、すごい、これは三神さんが書いたんだ!と女の直感が働いてしまいました。

 

それにも関わらず、ヒロインみすずは白田役を無罪に設定する愛の深さ。彼の苦悩を知っているが故のストーリー。

 

タイトルは「初恋」ですが、それだけでは白田に届かない。

 

内容を三億円事件にして初めて、行方知れずでも白田は必ず読む。

 

はっきり言って、世界中でただ一人、白田だけが読んでくれたら良いのです。

 

あの日、ずっと鎌倉の海で待っていた自分を置いて、何処かに消え去った白田に、三神さんが思いの丈を、学生時代から今に至る一途なみすずの想いを、彼に届けたかったのだと、ひとり妄想してしまいました。最後のページはこの締めくくり。

 

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この二冊を読み比べて思ったことは、世の中の知らないところで、この二人の作者が、決して忘却の彼方に捨て置けない特別な青春を過ごした事実を書き残したい、という共通の思いが、月を抱いた雲のように哀愁を帯びて見え隠れするのです。

 

また「初恋」は、自分の存在と未だ消えることのない白田への想いを知らせておきたい、との恋文のごとく。


しかし、二作共に、世間一般も読むことになる。

 

事実無根の内容や矛盾点、不自然な点も敢えて織り交ぜながら、世間にフィクションだと思わせながら、人知れず、本という媒体を通して、当時を知る二人が、お互いを思いやるかのような作品として又は遺書として書き残したのでは…、と妄想してしまうのです。

 

特に白田の告白文は、プロには書けない支離滅裂な、しかし優等生の素人の筆力なのです。対してみすずの恋文も、故意にとも思える不自然な点だらけで、プロの文章ではないですが、文は人なり、弱さと優秀さが滲み出ているのです。

 

大事件にも関わらず、青春の思い出として書かずにはいられなかった二人の作者の思いが読み手に迫るのです。

 

動機が、片思いや恋愛やらの凄惨な犯罪が山ほどある中で、この大事件を背景にした小説ニ冊には、恋と友情という青春時代の心の機微の中に、人としての美学を貫ぬいた精神が、省吾と三神さんの二人に見られるところが、悲しくもあり同情してしまうのです。

 

 

今更、とっくに時効になっている事件を、フィクション小説で蒸し返す理由は全くないのですが、こんなに長々と書きたくなるのは、この犯罪の裏に、不完全たる人間の美化を求めたい私の直感、好奇心なのでしょうかね。

 

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読書感想文、
最後までお読みくださり有難うございました。 m(_ _)m

 

白田様、もしこの私の直感と分析がどんぴしゃり当たっておりましたら、ご連絡くださいませ。そしてこの直感と分析力に印税1000万くだされば、私が白田様の青春を更に美しく描いて小説を再出版致しますよ(笑)。

 

 

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