癒されるモノ・トコロ・ヒト

逗子に暮らす作家がおすすめするアラフィフ生活

突然芸能人に会ったら…成功編

あの人、俳優の・・・

 


数年前、羽田空港での出来事である。 

 


大トトロ(主人)と妹と海外に向かうべく、私たち三人は 空港ラウンジで待ち合わせをした。  

 

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JALお得意様ラウンジで、大トトロは白ワインを飲み始め、 

妹はと言うと、明太子のおにぎりを頬張っていた。 

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妹とペチャクチャ喋っていると、 

妹の顔のずっと後ろの方に、なんだか懐かしい顔が・・・。 

あれ?・・・あの人、どこかで見たような・・・あっ! 

 


妹に

「ねぇねぇ、さり気なく振り返って見てね。後ろの方にいる 白い髭の人、俳優の仲代達矢じゃない?」 

 

妹はペリエを飲みながら振り返り、そうだよ、そうだよ、と 

顔音痴の彼女にしては、珍しく言葉に確信がこもっている。 

 

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あんなに髭はやしてちゃ、ちょっとわかんないよね・・・、 

さらに呟く私に、

「あの髭でこの間テレビに出てたよ。私見たもん。」と 

そのテレビの内容を語り始める。 

ほんと~? 

ほんとだよ~。 

 


妹はすかさず携帯を取り出すと、夫にメールを送っている。 

すぐ近くに仲代達矢がいます・・・。 

 

大トトロにも話をふってみたが、妹より更に顔音痴の彼は 

分かんない、の一言。 

 


多分そうだよね・・・でも確信がないね・・・とサインを貰いたい衝動に駆られている私に、もう一回免税店、見に行こうよ・・・と 

妹が立ち上がった。 

 


「彼」の横を二人でスーっと何気なく通り過ぎて、出口にさしかかった時に、 

妹が

「お姉ちゃん、なんかさ~上着に仲代って書いてあったような気がする・・・」と立ち止まる。 

「うそ!え~、もう一度見てきてよ~」 

「やだよ~また行くなんて不自然じゃない・・・」 

もう・・・ 

 


私は妹を出口においたまま、つかつかと「彼」に背後から近づき、 

丁寧に折りたたまれている麻の上着に目をやった。 

「彼」のひざに軽やかにかけられているジャケットには、 

水色で確かに「仲代」と刺繍がなされていた。 

 


そのまま直進して大トトロのところへ戻り、パスポート頂戴!、ペンも!、 

と両者を受け取ると、そのまま「彼」のところへ戻り、 

横にペタッと張り付いて、声をかけたのである。 

 


仲代氏の笑顔は優しく「パスポートで宜しいのですか」と、お声もバイオリンの音のごとく麗しく、 

見事に会話が成立し、パスポートの最終ページにサインを 書いて下さった。 

 

 

遠くから恐る恐るこちらを眺めている妹にも手招きして、 

「彼」に妹を紹介し、妹のパスポートにも立派なサインが 刻まれた。 

 

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お礼を申し上げて興奮気味で席に戻った私たちは 

「あと20年若かったら、無名塾に入れてもらったのにね~」 

などとすっかり女優のたまごと扮していた。  

 

 


「彼」が遠くから、まるで映画「鬼龍院花子の生涯」の「鬼まさ」の 

表情と目つきそのものでこちらをジーッと見つめた。あァ・・・ 

主人公の夏目雅子もこの目で見つめられたのね、麗しすぎる・・・  

 

 


うっとりし始めた私は 

大トトロに名刺を催促し、その裏に私たち姉妹の名前と住所と携帯番号を 

書き連ね、お遊びにいらして下さい、美味しいお魚がたくさんありますので・・・などと食べ物で釣るかのような一言を書き添え、 飛行機のアナウンスに立ち上がった「彼」にそそくさと渡しに行ったのである。 

「彼」は急に無邪気な笑顔をたたえ、 

お遊びにいらしてくださいね、と声をかけた私に 

はい、と確かに返事をしてくれた・・・。 

 


あれから数ヶ月、携帯電話を眺めては、 

見知らぬ着信記録がないものかと、ため息をついていたものだ。今では楽しかった旅のはじめの1ページである。

 

仲代達矢様、またお会い出来ることならお会いしたいです…。

 

(因みに最近知ったのですが、パスポートには印以外には書き込みはいけないそうです。真似しないでね💧)

 

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