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逗子に暮らす作家がおすすめするアラフィフ生活

土用の丑の日の鰻   鰻嫌いの私が好きになった鰻記念日

 

鰻記念日

 

「その方」が余りにも美味しそうに鰻の話をするものだから、ついつい、食べてみます!と同意し、老舗の野田岩でご馳走になったのが、一昨年の11月11日のことである。


それから約2年の間に、鰻重を相当数、完食した。

 

小学校低学年の時に、横浜高島屋の特別食堂で平らげた鰻重の数を入れると、数十回にはなるのであるが、何せ、その姿形を知って以来、口にしていなかった。


大人になってからの初挑戦が、「野田岩」であったことは有難い。

 

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上等な黒塗りの重箱の蓋を開けると、香ばしい匂いがし、山椒を振り掛けると更に食欲が湧いた。空腹という、最高の調味料も加わる。

 

鰻とご飯を箸で丁寧に切り取るように、手前から手前へと小さなお口に運ばれる「その方」の作法を真似て、手前からご飯の一粒をも残さずに攻めていく。黒塗りの重箱の底が少しずつ広がる。

 

これが肝吸い…

怖々とお椀の中に一瞬目をやると、日常では見かけない、何やら白いものがウニャっと浮かんでいる。

 

「その方」は、これがまた旨いんですよ、と綺麗な箸づかいで、ヒョイっとすくい上げると、パクっとお口に入れ、吸い物を静かに含み、満面の笑みで流し込んだ。余りの見事な仕草に感動し、これは真似るしかないと腹をくくった。

 

 

不気味なものをすくい上げ、口に放り込むと、出汁の効いたつゆの中でほんのり苦味がしたものの、美しく食べることに意識が集中していまい、更に柚子の皮と一緒に流し込み、美味しい!と漏らすと「その方」は良かった!と重箱の蓋を静かに閉めた。

 

その日以来「その方」は私の鰻の師匠となった。

 

 

 

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そして今日は9回目。湘南一の鰻の老舗の「國よし」である。

 

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お品書きには、これまで経験したどの鰻重より、高価な値段が付いている。

 

 鰻重を2つ!

「その方」はいつものように注文した。出てきた鰻は、重箱ではなく、鰻丼の形で輪島塗の器に納まっていた。

 

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丸い蓋を開けると、200年の伝統を受け継ぐ秘伝のタレが上品な焼き色をしており、豊かな蒲焼きが黄金色に輝き、輪島塗にしっとりと馴染んでいた。関東大震災の際には、店主が、津波を怖れ、秘伝のタレ壺を持って逃げたそうだ。

 

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お吸い物を含むと、昆布と鰹の出汁の風味が広がる。普通ではない。手前から鰻をほぐすようにご飯にのせたまま一気に口に運ぶと、想像していたよりしっかりした濃厚な味わい。これまた普通ではない。

 

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「その方」は時々、美味い、本物だ!、と発し、お新香に箸が伸びると、何やらをつまみポリポリとリズミカルな音を立てながら、箸休めを楽しんでいる。自分のお新香と比べてみると、どうやら奈良漬を召し上がっているようだ。


え?奈良漬?ここで?私は奈良漬の隣の胡瓜の糠漬けをつまみ、同じようにポリポリすると、その絶妙な漬かり方が、これまた普通ではない。鰻初心者にも関わらず、このタレは…、このふっくら感が…、軽く塩で下味がついていないか…、と講釈を垂れる自分に笑う。器も、小鳥で統一されて素敵✨

 

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唇がヒリヒリするほどの山椒は、脳内モルヒネまで刺激するほどに香り高く、名脇役となっている。お新香の中の赤かぶも、胡瓜と共にテーブルに彩りを添え、幾度も差し替えられるお茶の熱さまで、気が利いている。黒い着物姿の女将はちょっとないくらいの妖艶さを備えた美人で、「その方」は女将の顔をまともに見られないようだ。

 

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帰り道、奈良漬はあの段階でつまむものなのかを尋ねると、「その方」は、あれはしまったと思ったのですよ、鰻と奈良漬では甘い味が続いてしまう、と笑う。

 

真似ようかと思ったが、つい糠漬けに箸が伸びたと告げると、ご自分が良いと思った方法で自由にお食べなさい、と笑い、奈良漬は最後ですね、と悪戯そうな目をしてまた笑った。

 

去年の11月11日は私の鰻記念日。食の広がりに伴い、新たな感動が広がる。

 

よく見ると1111。まるで鰻が並んでいるような相応しい日付であった。

 

今年の夏の土用の丑の日

明日7月27日である。

今日頂いてしまったので、明日はお肌がつやつや、化粧ノリも良く、女子力もアップアップだろう。

 

 

 

様々な言い伝えがあるようだが、猛暑に向かう夏バテ防止に、ビタミンA群B群が豊富に含まれている鰻は、完全栄養食品であり、食欲減退防止効果が期待出来るという。

 

あの鰻嫌いの私が、今では鰻重を食べ歩く。

因みに鰻初心者から、皆様がご存知の名店を以下に。

 

 

銀座四丁目の「竹葉亭」、山椒が効いて香ばしく、いっぱい振りかける。

タレもほどほどに甘く、ぱりっとふわっと美味しい、のひと言。

最近では外国人の観光客グルメスポットになっている模様。

横浜SOGOにも店舗があり、さっぱりした鰻重を食べたくなると、つい寄ってしまう。

 

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鎌倉老舗「つるや」

 

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鎌倉六地蔵そば。ミシュランで星を得たそうだが、
前もって予約しておかないと、仕込みにかなり待たされる。タレは少なめだが、ぱりっと焼けていて、いつでも気軽に食べたい、と思う。大人味の鰻重。

 

 

小田原の箱根入り口「友栄」

昔、家族で何度も寄ったが、その度に、鰻嫌いの私だけは、親子丼を注文していた。お店が建て直され、もはや親子丼はない。香ばしい秘伝のタレが、これでもかと甘く深く鰻に寄り添い、その鰻の大きさは最大級。ふわっふわ。

 

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毎朝、市場で一番大きな青鰻を仕入れてくるそうで、静岡産だったり、鹿児島産だったりするそうだ。私の場合は、かなりお腹を空かせていかないと、このボリュームは完食できそうにない。

 

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着物姿の女将の帯留めが、珊瑚の白鰻だったのも、粋で素敵であった。

 

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